「売上が増えたのは嬉しいが、税金と社会保険料で半分近く持っていかれる…」
「国民健康保険料の通知を見て、金額の高さに愕然とした…」
ある程度成功した個人事業主やフリーランスが、必ずぶつかる「見えない壁」。それが「社会保険料の負担」です。
所得税や住民税は「経費」で多少コントロールできても、国民健康保険料や国民年金は、所得に比例して容赦なく上がり、上限も非常に高く設定されています。年収が上がれば上がるほど、手取りが増えないというジレンマに陥ります。
しかし、この重い負担を劇的に、かつ合法的に軽くする「裏ワザ」的なスキームが存在することをご存知でしょうか?
それが「マイクロ法人」を活用した、「個人事業と法人の二刀流」戦略です。
このスキームを正しく導入すれば、年収が変わらなくても、社会保険料だけで年間50万円以上、税金も含めれば100万円近く手取りを増やすことも夢ではありません。
⚠️ 【重要】この記事を読む前にご確認ください
このスキームは、「誰でも得をする魔法」ではありません。
法人設立にはコスト(設立費用や均等割など)がかかるため、以下の「3つの条件」を満たす方でないと、逆に損をする可能性があります。
- 条件1:個人事業の所得(利益)が、年間600万円以上ある
- 条件2:扶養すべき家族(配偶者や子供)がいる
- 条件3:個人事業とは明確に異なる「別のビジネス」を法人で回せる
あなたがこの条件に当てはまる「選ばれし個人事業主」であれば、この記事はあなたの手取りを最大化する最強のガイドブックとなるでしょう。
「そんなうまい話があるわけない」「脱税ではないのか?」
そう思われるのは当然です。そして、その直感は半分当たっています。この手法は非常に強力ですが、一歩間違えれば「租税回避行為」や「社会保険の不正加入」とみなされ、税務署や年金事務所から厳しい処分を受けるリスクを孕んでいるからです。
この記事では、マイクロ法人スキームの仕組みと具体的な削減シミュレーションを解説するだけでなく、プロの税理士として「絶対に踏んではいけない地雷(法的な否認リスク)」について、根拠条文を交えて徹底的に深掘りします。
安易な「売上の付け替え」や「実体のない法人」がなぜ危険なのか。正しい知識で武装し、安全に手取りを最大化するための完全ガイドです。
第1章:なぜ「マイクロ法人」で社会保険料が安くなるのか?そのカラクリ
まずは、このスキームの根幹にある「日本の社会保険制度の仕組み」を理解しましょう。
国民健康保険(個人) vs 社会保険(法人)
日本には2つの公的保険制度があります。
- 個人事業主が入る「国民健康保険(国保)」:
前年の「所得」に対して課せられます。扶養という概念がなく、家族全員分の保険料がかかります。上限額も年々上がっており、高所得者には非常に厳しい制度です。 - 会社員・役員が入る「社会保険(社保)」:
会社から受け取る「給与(役員報酬)」の額に対して課せられます。扶養家族の保険料はタダです。
ここでのポイントは、「社会保険(社保)は、給与が低ければ低いほど安くなる」という点です。
「二刀流」の魔法:所得を分散させる
もし、あなたが個人事業主のままであれば、稼いだ利益すべてに対して高い「国保」がかかります。
しかし、あなたが「マイクロ法人(社長一人だけの小さな会社)」を設立し、次のような「二刀流」の状態を作ったらどうなるでしょうか?
【二刀流のポートフォリオ】
- ① 個人事業主としての自分:
本業(メインの稼ぎ)を行い、ガッツリ利益を出す。
→ しかし、マイクロ法人で「社保」に加入するため、個人の「国保」は脱退できる。 - ② マイクロ法人の社長としての自分:
副業的なビジネス(資産管理など)を行い、最低限の売上を作る。
→ 役員報酬を「月額4万5千円(社会保険の最低等級)」に設定し、激安の「社保」に加入する。
この状態を作ると、個人事業でいくら利益を出しても(例えば年収1,000万円でも)、社会保険料の計算対象にはなりません。
社会保険料は、あくまで法人の「月額4万5千円」の給与に対してのみ計算されるため、年間で最低額(約13万円程度)の負担だけで済んでしまうのです。しかも、この金額で、個人事業の家族全員を「扶養」に入れることも可能です。
第2章:【衝撃の差】年間いくら得するのか?シミュレーション
論より証拠です。具体的な数字で比較してみましょう。
※以下の試算は、東京都の「協会けんぽ(令和5年度)」の料率を使用しています。健康保険料率は都道府県によって異なりますので、お住まいの地域によっては若干の誤差が生じます。
・40歳以上(介護保険あり)
・扶養家族あり(妻、子1人)
・本業の利益(所得):600万円
パターンA:個人事業主一本の場合
全ての利益に対して、国民健康保険と国民年金がかかります。
- 国民健康保険料:約85万円(所得割+均等割)
- 国民年金保険料:約40万円(夫婦2人分)
- 年間負担額合計:約125万円
パターンB:マイクロ法人との二刀流の場合
個人事業の利益はそのままで、マイクロ法人から「月額45,000円」の役員報酬を受け取り、社会保険に加入します。
- 健康保険料(会社+個人負担):約7万円(最低等級)
- 厚生年金保険料(会社+個人負担):約19万円(最低等級)
- 年間負担額合計:約26万円
※この26万円の負担だけで、将来受け取る年金は「国民年金」ではなく、より手厚い「厚生年金」になります。
法人の維持コスト(均等割7万円や税理士報酬など)を差し引いても、手元に年間50万円〜70万円以上のキャッシュが確実に残る計算になります。
第3章:【年収別】所得に応じた削減効果の目安表
「私の年収だと、どれくらい安くなるの?」という疑問にお答えするため、所得別の削減効果(目安)を一覧表にしました。
※条件は前述の通り(40歳以上、扶養あり、東京都)。法人の維持コスト(約30万円と仮定)を差し引いた「純粋な手残り増加額」です。
| 個人事業の利益(所得) | 国保・年金の負担 | マイクロ法人(社保) | 実質メリット(年) |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 約85万円 | 約26万円 | 約29万円 |
| 600万円 | 約125万円 | 約26万円 | 約69万円 |
| 800万円 | 約145万円 | 約26万円 | 約89万円 |
| 1,000万円 | 約160万円(上限) | 約26万円 | 約104万円 |
このように、所得が400万円〜500万円を超えたあたりからメリットが出始め、600万円を超えると効果が劇的に大きくなることがわかります。
逆に、所得が300万円以下の場合は、法人の維持コストの方が高くなる可能性があり、手間ばかり増えてメリットが薄いため推奨できません。
また、「独身(扶養家族なし)」の場合も、削減効果は小さくなります。なぜなら、国民健康保険は扶養の概念がなく人数分かかりますが、独身の場合は自分一人分で済むため、もともとの保険料が(家族持ちに比べて)安いからです。
第4章:【最重要】税務署に否認されないための「事業実態」の作り方
ここからが本題です。このスキームは、「法人」と「個人」の事業が明確に区分されていなければなりません。
「面倒だから、個人で受けていた仕事を適当に法人に移そう」
「売上の一部だけ法人請求にしよう」
このような安易な考えは、税務調査で「租税回避行為」として否認されるリスクが極めて高いです。
リスクの根拠:法人税法132条と所得税法12条
国税庁は、実体のない法人利用や、税金を減らすためだけの不自然な取引を許しません。
- 実質所得者課税の原則(所得税法12条):
「形式的に法人の売上にしていても、実質的に個人が稼いだものであれば、個人の所得として課税する」というルールです。 - 同族会社の行為計算否認(法人税法132条):
「同族会社(社長一人の会社など)を使って不当に税負担を減らしている場合、税務署長の権限で計算をやり直す(課税する)」という最強の伝家の宝刀です。
絶対にやってはいけないNG事例
例えば、フリーランスのエンジニアが、全く同じクライアントに対し、全く同じ業務内容で、「A案件は個人口座へ、B案件は法人口座へ振り込んでください」と指示するケース。
これは完全にアウトです。事業内容に違いがなく、単に売上の付け替えを行っているだけとみなされます。
正しい「事業の切り分け」とは?
マイクロ法人が認められるためには、個人事業とは異なる「独自のビジネス」を行う必要があります。
- 個人事業:エンジニアとしての受託開発、コンサルティング(労働集約型)
- マイクロ法人:自社アプリの運営、アフィリエイト、株式・不動産投資の管理(ストック型・資産管理型)
このように、「誰が見ても別事業である」と説明できる状態を作ることが、このスキームを安全に運用する絶対条件です。
第5章:【税理士が警告】導入時の5つの落とし穴(注意点)
メリットの裏には必ずリスクがあります。以下のポイントをクリアできなければ、マイクロ法人の導入は見送るべきです。
注意点1:法人売上がゼロの状態が続くと「社保取り消し」のリスク
「法人の売上がなくても、社長が個人的にお金を貸せば(役員借入金)、役員報酬は払えるから大丈夫」
実務上、一時的な資金不足を役員借入金で補うことはよくあります。しかし、「法人としての事業収入が長期間全くない」状態が続くと話は別です。
年金事務所の調査が入った際、「この会社は事業活動の実態がない。社会保険に加入するためだけのペーパーカンパニーだ」と判断されると、社会保険の加入資格を遡って取り消される可能性があります(健康保険法上の被保険者要件)。そうなれば、過去に遡って高額な国民健康保険料を請求されることになります。少額でも構いませんので、必ず「法人の事業による売上」を立て続ける必要があります。
注意点2:役員報酬は「月額45,000円〜60,000円」がセオリー
社会保険料を最低にするには、以下の等級を狙います。
- 健康保険の最低等級(1級):報酬月額6万3千円未満
- 厚生年金の最低等級(1級):報酬月額9万3千円未満
両方の最低等級を適用させるためには、月額6万円以下に設定するのが鉄則です。
注意点3:法人住民税の均等割(年間7万円)は必ずかかる
法人は、赤字であっても毎年「法人住民税の均等割(約7万円)」を支払わなければなりません。
注意点4:税務申告の手間が2倍になる
「個人の確定申告」と「法人の決算申告」。2つの申告が必要になります。特に法人の申告は複雑で、自力で行うのは困難です。事務負担が増えることは覚悟しなければなりません。
注意点5:創業融資との相性(要注意!)
もしあなたが「創業融資」を検討しているなら、マイクロ法人は要注意です。
銀行は「役員報酬が極端に低い会社」を警戒します。「社長はどうやって生活しているのか?」と不審がられるからです。「個人事業で十分な収入がある」ことを証明できれば問題ありませんが、メインの事業をマイクロ法人で行う(売上を抑える)場合は、融資審査で不利になる可能性があります。
第6章:マイクロ法人は「合同会社」が最適?コスト比較
マイクロ法人を作る際、「株式会社」にするか「合同会社」にするかで悩む方が多いですが、結論としては「合同会社」が圧倒的におすすめです。
理由1:設立コストが14万円も安い
- 株式会社:登録免許税15万円 + 公証人手数料5万円 = 約20万円
- 合同会社:登録免許税6万円 = 約6万円
マイクロ法人は「節税(コスト削減)」が主目的です。対外的な信用力や資金調達をそこまで必要としないため、イニシャルコストが安い合同会社が理にかなっています。
理由2:役員の任期がない
株式会社は最長10年ごとに役員の「重任登記」が必要で、その都度1万円の印紙代と司法書士報酬がかかります。合同会社には任期がないため、このランニングコストがかかりません。
第7章:妻を社長にする場合の「扶養」の壁
マイクロ法人を妻(配偶者)に任せ、社会保険に加入させた上で、自分は扶養に入る、あるいは妻を扶養に入れたまま役員にする、といったスキームも人気です。しかし、ここには複雑な「扶養の基準」が存在します。
社会保険上の扶養(130万円の壁)
社会保険の扶養に入るためには、年収が130万円未満である必要があります。
- これは「手取り」ではなく、交通費なども含んだ「総支給額」です。
- 月額にすると108,333円以下である必要があります。
所得税法上の扶養(103万円・150万円の壁)
税金(配偶者控除)の壁はまた別です。
- 103万円の壁:これを超えると妻自身に所得税がかかります。
- 150万円の壁:これを超えると、夫の配偶者特別控除が減り始めます。
第8章:【FAQ】マイクロ法人に関する疑問を完全解決(10選)
最後に、マイクロ法人についてよくある質問に、実務的な観点から回答します。
Q1. 役員報酬をゼロにしたら、もっと安くなりますか?
A. いいえ、ゼロにすると社会保険に入れません。
社会保険に加入するためには、給与が発生している必要があります。報酬ゼロでは加入資格が得られず、引き続き高い国民健康保険を払うことになってしまいます。「最低等級で加入できる金額」を設定するのがポイントです。
Q2. 副業禁止の会社員ですが、バレずにマイクロ法人は作れますか?
A. マイナンバーや社会保険の重複でバレる可能性が高いです。
本業の会社で社会保険に入っている場合、マイクロ法人で社会保険に入ると「二以上事業所勤務届」という手続きが必要になり、本業の会社に通知が行きます。会社員の方は、社会保険削減目的ではなく、単なる資産管理会社(社保に入らない)としての活用を検討すべきです。
Q3. 税理士に依頼せず、自分で運用できますか?
A. 難易度は高いですが、勉強すれば可能です。
マイクロ法人の会計処理は取引数が少ないため、比較的シンプルです。しかし、設立手続き、社会保険の手続き、年末調整、決算申告と、やるべきことは多岐にわたります。「手間」と「専門家に払うコスト」を天秤にかけて判断してください。
Q4. 仮想通貨の利益をマイクロ法人に移せますか?
A. 可能ですが、法人名義の口座で取引する必要があります。
個人の仮想通貨を法人に移すには、時価で譲渡(売却)する必要があります。法人で口座を開設し、法人として取引を行えば、利益は法人税(最大約23〜33%)の対象となり、個人の雑所得(最大55%)より有利になるケースがあります。
Q5. マイクロ法人でiDeCo(イデコ)は加入できますか?
A. 加入できます。掛金も全額所得控除になります。
マイクロ法人の役員として、第2号被保険者になります。掛金の上限は月額23,000円です。小規模企業共済と合わせて活用することで、さらに節税効果を高めることができます。
Q6. 家族(妻など)を従業員として雇えますか?
A. 可能ですが、社会保険の加入義務に注意が必要です。
常勤の従業員として雇うと、その家族も社会保険の加入対象になります。社会保険料が2倍になるため、マイクロ法人の「コスト削減」という目的からは外れてしまう可能性があります。
Q7. 法人の住所は自宅でもいいですか?
A. はい、自宅兼事務所で登記可能です。
ただし、賃貸物件の場合は契約内容(事務所利用可か)を確認する必要があります。また、ネット上に自宅住所が公開される(国税庁の法人番号公表サイトなど)リスクがあるため、バーチャルオフィスの利用も検討の余地があります。
Q8. マイクロ法人を閉鎖(解散)したくなったらどうなりますか?
A. 解散・清算の手続きに約10万円〜のコストがかかります。
会社は作るより畳む方が大変です。登記費用や官報公告費用などがかかります。「とりあえず作ってみよう」ではなく、長期的なシミュレーションが必要です。
Q9. マイクロ法人で融資を受けることはできますか?
A. ハードルは高いですが、事業実態があれば可能です。
役員報酬が極端に低い場合、銀行は「生活費はどうしているのか?」と懸念します。しかし、個人事業の確定申告書をセットで提出し、世帯全体の収入が安定していることを証明できれば、融資を受けられる可能性はあります。
Q10. 役員社宅の制度は使えますか?
A. 大いに活用すべきです。
自宅を法人名義で契約し、役員社宅として住むことで、家賃の50%〜80%を経費にできます。個人の手取りから払うよりも圧倒的に有利です。ただし、法人名義での契約が必要なため、大家さんの承諾が必要です。
まとめ:マイクロ法人は「守り」の最強戦略
マイクロ法人は、売上を増やす「攻め」の戦略ではなく、手取りを守る「守り」の戦略です。
年間50万円〜100万円の固定費削減は、売上で言えば数百万円分の価値に相当します。しかし、その構築には「法人の実態」という強固な土台が必要です。
「自分の事業で切り分けができるか不安」「税務リスクを回避しながら導入したい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。私たち荒川会計事務所では、個人と法人のトータルでの最適解をシミュレーションし、あなたにベストな「二刀流」の形を提案いたします。
あなたはいくら損している?社会保険料削減シミュレーション
現在の所得と家族構成から、マイクロ法人導入による削減効果を無料で試算します。
知らないまま払い続けるのは、もう終わりにしましょう。
記事執筆監修者
荒川会計事務所(経営革新等支援機関(認定支援機関))代表税理士・登録政治資金監査人・行政書士の荒川 一磨です。
会社設立と創業融資を得意とし、何でも相談できる話しやすいパートナーであることを心掛けている事務所です。
事務所所在地 〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-16 霞ビル8F
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所属 東京税理士会四谷支部・東京行政書士会新宿支部
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